相続には、「子供のいない夫婦のどちらかが亡くなった場合、遺言状が無い限り、配偶者だけでなく、故人の兄弟、姉妹も法定相続人になる」というルールがあります。そのために思わぬ形で財産を受け取ることもあるという事例を紹介しましょう。
この依頼人は、早くにご主人を亡くしており、日頃から義兄夫婦が何かと助けてくれました。その義兄が亡くなった後、しばらくして義姉から電話があり「義兄の財産は、甥であるお宅の息子たちも相続人なのよ」ということが伝えられました。相続人決定のルールを知らなかった依頼人は、にわかには信じられなかったのですが、説明を聞くうちに納得がいきました。
義兄夫婦には、子どもがなかったため、遺言状を残せば、義姉一人に財産を渡すことができたはずなのです。しかし、この夫婦は、生活には余裕があり、敢えて遺言を残さなかった様子です。義兄は、亡き弟のことを思い、生前、依頼人や息子たちを「親代わりだ」といって、とてもよく面倒をみてくれていました。また、義姉もそれに従って、とても優しく接してくださっていたようです。
依頼を受けて、義兄の財産を調査したところ、義姉も知らなかった預金や株式が発見され、息子さんたちも相続することになりました。依頼人は、私たちの前でも「義姉に申し訳ない」と繰り返し、おっしゃっていましたが、義姉は、「私の生活は十分成り立つ。夫の意思だから安心して」と言ってくださいました。
現在、二人の息子さんたちは、大学院、大学に通っています。長男は「僕も将来、伯父さんのように、周囲の人を助けることができるような余裕を持ちたい」と言っています。
埼玉県・川越市
被相続人:伯父
相続人:甥(2人)
総額:約3000万円