相続すべき財産は多種多様です。私どものこれまでの経験で感じるのは、「資産が多い人ほど、財産を複数の種類に分割して保有している」ということで、さらには、「金融機関の口座を複数持つことで預け先も分散させている」ことも多いようです。その中には家族が知らない意外な金融機関が含まれていたり、節税のためか口座や不動産を、本人ではなく家族名義にしていたりするケースもあります。
これでは相続人が把握しきれないのは当たり前ですね。この事例は、そんな資産家一家の相続が終わった後の話です。
依頼人は、資産家の一人娘で、現在は大阪で暮らしていらっしゃいます。
この方のお父様は、ある企業の創業者であり、都内の一等地に自社ビルを所有していました。また、投資意欲も旺盛な方で株や投資信託、不動産、金など多くの分野に投資され、結果的に財産が分散されていたようです。
ただし、依頼人は、お父様の財産の詳細を把握しておらず、また、80歳を超えたお母様は認知症で、高齢者施設に入居なさっていることもあり、相続時にも、たとえば、会社の持ち株や通帳が手元に保管されていた預金、証券会社からの郵送物があった株や投資信託、権利書が見つかった自宅の土地・建物など、遺族が調べてもわかる範囲でしか相続手続きをしませんでした。
それでも十分な財産が手元に残り、お母様の入所費用なども賄える余裕があったので、当時は、「それ以上、財産を探そう」という発想は持たなかったそうです。
しかし、このケースでは、「お父様が資産家であったこと」はとても明確な事実であり、依頼人ご自身がはじめから、「相続できなかった財産があっても不思議じゃない」と思っていらっしゃいました。そのため、私どもがお話をお聴きするうちに、さまざまな財産を調べる必要があると感じました。
さて、調べ始めると、面白いように見つかりました。
まずは神奈川県藤沢市の一等地に約90坪の土地が放置されていることを発見しました。依頼人は現在大阪にお住まいなので、その土地を利用することはないとのことで、すぐに売却をお手伝いしました。
その後、お父様名義の預金(自宅に通帳が無かった)が複数の銀行にあることを発見。続いて、依頼人名義の預金や株も発見されました。
1件ずつの金額は巨額というわけではありませんが、それにしても合わせると、おおよそ2億円程度になります。
さて、お父様が何を考え財産を分散させていたのか、なぜ娘の名義の口座を使っていたのかなどは、今となっては誰にもわかりませんが、おそらく、家族のことを考えた上での事だったに間違いありません。死後数年経ってからでも発見されて、自らが残した財産が、結果的にご家族のものとなったことで、お父様も喜んでいらっしゃることでしょう。
この事例では、多くの銀行、証券会社、信用金庫など、多方面に対する調査を行いました。故人の生前の投資行動を予想しながらの調査でしたので、所要期間も長くなりましたが、無事、分散した財産を取り戻すことができました。
神奈川県・藤沢市ほか
被相続人:父
相続人:妻・子(1人)
総額:約2億円